養老山地と扇状地


岐阜県と三重県との県境を形成する養老山地は、断層運動によって形成された傾動山地である。 断層の東側には広大な濃尾平野が広がるが、山地と平地との境目にはいくつもの扇状地が形成された。 複数の河川が形成した扇状地は、複合扇状地の形状を呈する。
管理人は小雪のちらつく2003年12月19日、濃尾平野の西端にあたるこの地を訪れた。


孝子酒泉伝説 孝子酒泉伝説
この写真の正面にそびえる山地には、養老ノ滝と呼ばれる伝説の滝がある。伝説の概要は、 昔々、貧しく身分の低い男がいた。男の父親は酒を愛でた。男は貧しい暮らしの中、酒を求めては 父親に与えていた。ある日、山中で過って転倒した時、そこから流れ出る水が酒であることに気づいた。 以来男は、この酒を汲んでは父親に飲ませた、というもので、いわゆる孝子酒泉伝説である
その地は以来養老ノ滝と呼ばれ、現在では観光地になっている。写真の孝子像は近鉄養老駅前に 置かれ、1939年の作品。


水無川と三角末端面
養老駅から南に歩くと、断層崖を侵食する河川のひとつ、小倉谷に至る。写真は扇央の様子。 扇状地の扇央は砂礫質の粒の粗い土壌ゆえ、水は地下へと伏流して地表面は水無川に なる場合がある。この写真は典型的な扇央の水無川の様子を撮影したものである。ただし、 ひとたび集中豪雨となれば、鉄砲水が押し寄せる危険性を孕む。 また、写真からも窺えるように扇央は地下水面が深く水が得にくいため一般的に開発は遅れる。
なお、背後の養老山地はいくつもの谷が削られ、典型的な三角末端面を呈している。
水無川と三角末端面


扇端湧水帯と集落立地 扇端湧水帯と集落立地
扇央で伏流していた水は、下流側の扇端で地表面に現れ、湧水帯を形成する。 この湧水を求め、湧水帯に沿う形で写真のような列村が発達する。 伝統的な集落ゆえ道路幅員は狭いが、車の通行量は少なくない。 この時間帯は、ちょうど近所の小学校の低学年児童が下校する時刻で、 すれ違うたび「さようならー」「こんにちはー」などと挨拶してくる。 ふ〜む、よい子達だ。ただし、地域の目が行き届いている感じで、 部外者がうろうろするには居心地が悪い。不審者として通報される危険もある。


天井川
扇端湧水帯の集落付近では小倉谷は天井川となっており、写真のように 道路はトンネルで河床をくぐる形になる。扇状地は山地と平地との境目に形成されるもの。 ゆえに、土砂の運搬量が多いため、堤防によって河道を固定すると天井川となる 公算は高い。
天井川


横綱鬼面山生誕地 横綱鬼面山生誕地
明治初期の横綱・鬼面山も扇端湧水帯の集落の出身である。近年、写真が見つかって話題になった ような記憶もあるが、浮世絵の中の人物というイメージである。



作成日:2003年12月22日